真夏の死/三島由紀夫

真夏の死―自選短編集 (新潮文庫)

真夏の死―自選短編集 (新潮文庫)

やっとこさ今年4冊目。遅々とした歩みでございます。
久々の三島はやはり文章がうつくしかったです。
表題作の「真夏の死」を読んでいる時に、ちょうど新幹線が熱海のあたりを通りかかったのがなにやら寒気がするようなタイミングでした。

あれほどの不幸に遭いながら、気違いにならないという絶望、まだ正気のままでいるという絶望、人間の神経の強靱さに関する絶望、そういうものを朝子は隈なく味わった。人間を狂気に陥れ、死なせるのには、どれだけの大事件が必要なのか? それとも狂気は特殊の天分に属し、人間は本質的に決して狂気に陥らないのか?   (p.192)

なにかもっとこう、理不尽な不幸に対峙する人間について書いた短編かと思いきや、最後の一行が果てしなくホラーだったような。


「煙草」と「サーカス」、なにより三島自身が書いた解説が興味深かったかも。他人が書いた解説というものに興味がなくて、いつもほとんど読まないんだけど(本編を自分が読めばすむ話のような気がして)本人が書いたとなれば話は別です。おもしろいこといっぱい書いてあった。本人が解説するっていいね!